ロス・ブランコは近年、世界最高の10代のタレントを獲得することに成功し、今シーズンのチャンピオンズリーグでその成果を発揮している。
レアル・マドリーで今季主役となっているのはカリム・ベンゼマやルカ・モドリッチといったベテランだが、ヴィニシウス・ジュニオールやロドリゴ、エドゥアルド・カマヴィンガも成功を確かに支えている。
2021-22シーズンはラ・リーガを制覇し、チャンピオンズリーグ(CL)決勝に進出する上で、ベテラン選手たちは重要な役割を果たしたが、「ベイビー・ギャラクティコス」たちも疲労が蓄積して冷静さを保つのが難しい息苦しい終盤に、ベンチから決定的な結果を残したのである。
特に、準々決勝のチェルシー戦のセカンドレグ、準決勝のマンチェスター・シティ戦では、カマヴィンガとロドリゴの投入が、延長戦での勝利に大きく貢献した。また、その前のパリ・サンジェルマンとの対戦でも劣勢に追い込まれていたマドリーが、残り33分でこのダイナミックなコンビを入れると、ベンゼマがハットトリックを達成して合計スコア3-2で勝利した。
ティボー・クルトワを筆頭に、経験豊富なセンターバックのダヴィド・アラバ、2016年から18年にかけてチャンピオンズリーグを3連覇した中盤トリオ、そして絶好調のベンゼマなど、ロス・ブランコスのセンターラインは知られ、称賛もされている。
しかし、カルロ・アンチェロッティが主にベンチから頼りにしてきた若い才能の脇役たちもまた、マドリーの決勝進出には欠かせない存在だったのだ。
■2015年から始まったペレスの移籍戦略
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2015年に遡るフロレンティーノ・ペレスの移籍戦略の変更は、称賛に値する。マドリーは高額な移籍金でビッグネームを獲得しようとすることをほぼ止め、代わりにサンティアゴ・ベルナベウで爆発できる、最高に才能ある若い有望株に投資することを始めた。
以前までの世界とは逆となり、バルセロナが財政難にあえいでいる一方で、マドリーは財政的に健全だ。ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長の時代にバルサはフィリペ・コウチーニョ、ウスマン・デンベレ、アントワーヌ・グリーズマンに数億ユーロを投じたのに対し、マドリーはより抜け目なく行動していた。
2014年にハメス・ロドリゲスを買って以来、エデン・アザールとルカ・ヨヴィッチを除いて彼らは1人の選手に5000万ユーロ以上を費やしていない。レンヌから3100万ユーロでカマヴィンガ、フリーでアラバ、サントスから4500万ユーロでロドリゴ、フラメンゴから同額でヴィニシウス、チェルシーから3500万ユーロでクルトワ、2500万ユーロでトニ・クロースを獲得した。この夏には、チェルシーからアントニオ・リュディガーがフリーで獲得する予定だ。
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ネイマールは、バルセロナの財政的混乱とマドリードの戦略転換の両方に大きな役割を果たした人物だ。2013年にブラジルのスターを逃したペレスは、次のネイマールを探すためにヴィニシウスとロドリゴの2人を迎え入れた。
一方、バルセロナはPSGがネイマールに支払った2億2200万ユーロに酔いしれ、ネイマールの後釜を探すためにその資金をついに使い果たした。
マドリーのアプローチは、バルセロナのリオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタ、シャビ後の倦怠期よりもはるかに苦痛が少ないことを保証するものでもあった。
モドリッチは36歳、ベンゼマは34歳にもなってそのクオリティを発揮しているが、変化は避けられない。しかし、マドリーには、少しの運とより多くの機会さえあれば、偉大な選手になれる可能性を秘めた選手たちが揃っている。
■ロドリゴが躍動した日
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ヴィニシウスを除いて、アンチェロッティは今シーズン、彼らを長くベンチに拘束しすぎたと言う人もいるが、監督に言わせればそれはフレッシュさを保つための方法だった。
レアル・マドリーの先発メンバーで明確な「オーナー」がいないポジションは最前線の右ウイングだ。アンチェロッティは主にマルコ・アセンシオを起用し、守備的にはエルネスト・バルベルデをオプション的に使ってきた。そして最近、ロドリゴは脚光を浴びるようになっている。
2020年の『NXGN』覇者であるロドリゴは、18歳と301日で出場したガラタサライ戦でハットトリックを達成し、スター選手の素質を持っていることは一目瞭然であった。
フェネルバフチェ戦でのウェイン・ルーニーの記録を39日上回り、ロドリゴより若い選手でこの偉業を達成したのは、18歳と113日、フェレンツヴァーロシュ戦で達成したレアル・マドリーの伝説のラウルだけである。
ヴィニシウスはより爆発的でスリリングな選手であり、左サイドのキーパーソンとしての地位を確立しているが、ロドリゴのゴールへの天性の嗅覚は、チームがビハインドを負ったときになくてはならない存在となっている。
ロドリゴが特に輝いたのが準決勝。マンチェスター・シティを相手にマドリーは90分に入り、3-5で敗退する寸前だった。この21歳の選手は、ベンゼマのカットバックをニアポストでゴールに押し込み、その1分後には、ダニ・カルバハルのクロスを頭で合わせて、試合を延長戦に持ち込んだのだ。
延長戦では、ロドリゴがベンゼマに低いクロスを送ると、ルベン・ディアスのファウルを誘う。このPKを「キング・カリム」が決め、レアル・マドリーは決勝進出を決めた
試合後のロドリゴは「説明できない。神様が僕を見て、今日はお前の日だと言ってくれたんだ」とコメントしている。
■ゲームチェンジャー、カマヴィンガ
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一方、カマヴィンガは試合の勝敗を決めるようなインパクトはないが、マドリーに有利なゲーム展開に変える上で、同様に重要な役割を担っている。
このフランス代表MFは、試合を熱狂の渦に巻き込み、あらゆる場所に現れ、マドリーの逆転劇に適した状況を作り出すのに一役買っている。
カマヴィンガがマドリーで決まったポジションを持たないように感じることがあるのは、現在のMF陣がいまだ健在であるからだ。ラ・リーガでは13試合の先発にとどまり、カマヴィンガは「プレーしないのは好きではないし、もっとプレーしたいけど、それは自然にやってくる」と語っている。
しかし、カマヴィンガは攻撃面でも守備面でも、ボールを持った選手を追い越し、絶妙のパスレンジを見せ、タックルに入るなど、大きな仕事をこなすことができる。
中盤にはカマヴィンガとバルベルデ、攻撃陣にはロドリゴとヴィニシウスという若い才能がおり、アンチェロッティは「将来は安泰だ」と語る。バルベルデ(23歳)とカマヴィンガ(19歳)で、マドリーは今後10年間中盤の3分の2の可能性を手に入れたことになる。そして、今シーズンの彼らのインパクトを見れば、その未来はそれほど遠くないだろう。
キリアン・エンバペを取り逃したマドリーだが、すでに今夏はモナコの22歳MFオーレリアン・チュアメニをトップターゲットに設定しているという。ビッグイヤーを掲げる掲げないに関わらず、マドリーの未来は明るいものとなっている。
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