2014年5月24日 (土)開催 | 基盤教育研究分科会

人材開発白書2014 戦略実行力-周囲を動かすミドルの影響力

参加レポート:熊本大学 北村士朗

毎年恒例となった「人材開発白書」に関する発表が同白書を執筆した研究室長の坂本雅明氏を講師に今年も行われた。

■継続調査テーマ:戦略実行力

DSCF2156.JPG「人材開発白書」は(株)富士ゼロックス総合教育研究所が1990年より毎年発行しているもので、最新版は要約が、そして2009年~2013年分は本文もダウンロードできる。
http://www.fxli.co.jp/co_creation/human_list/

ここ数年の人材開発白書では、企業の部長・課長クラスのマネージャー=ミドルの戦略実行力に注目し、以下のテーマを設定してきた。

2011年:メンバーの戦略実行を促進するためのミドルマネジャーのマネジメントを考える
2012年:トップの問題意識とミドルへの期待
2013年:組織の壁とミドルの巻き込み力
2014年:周囲を動かすミドルの影響力

今回のセミナーは、第1部「戦略を実現に導くミドルのマネジメント」で2011年~2013年版をレビューした上で、第2部「周囲を動かすミドルの影響力」では2014年での調査結果や提言について報告するという2部構成で行われた。

第1部では「業績=戦略×実行」であり、戦略策定だけでは業績は改善せず、その実行にも注目し手を打つべきだという、一連の調査研究のキーコンセプトが示された後、戦略実行マネジメントに関する自己診断を行った。

次に戦略実行マネジメントについて「戦略のマネジメント」「人・組織のマネジメント」の両面から解説された。

「戦略のマネジメント」は、「組織をやるべきことに集中させるために方向性を定め秩序を産み出す」マネジメントであり、そのポイントとして
1.やめる決断と、そのためのPDS
2.柔軟性と、そのための期初の論理性

の2点が挙げられた。

部門戦略を策定する際のミドルの悩みはリソース不足である。リソースが不足しているのであれば、当然、やるべきことを絞り込むべきだが、それができず、前年までの戦略に今年の施策が追加され肥大化していくのが多くの企業の現状。その一因は前期末レビューでの振り返りが不十分なことにあり、ミドルはしっかり立ち止まって振り返り、止めるべきことをやめる決断をすべきだ、という提言が前者である。

また、ミドルは、コントロール不能な要因で、期中の戦略変更を余儀なくされることが多いが、その際の悩みは、変更理由をメンバーに理解・納得させることができないことであるという。その原因のひとつは期首の戦略策定時に論理的検討が甘く、その結果、部下にはWhat(環境状況・目標)&How(施策)だけが伝わり、戦略の前提条件や仮設といったWhy(根拠)が伝わっていないことにあり、そのような状況下では戦略の変更について論理的に説明できず、当然部下を得心させることはできないことになる。ミドルが環境変化へ柔軟に対応するには、期首の十分な論理的検討が不可欠である、という提言が後者である。

もう一方の「人・組織のマネジメント」は「メンバー(部下)にもう一踏ん張りさせるための活力を与える」マネジメントであり、そのポイントとして
1.メンバーの背中を押す
2.メンバーの足かせをはずす

の2点が挙げられた。

メンバーを動かすには、そのメンバーにとっての意味等を説明し納得させることが考えられ、納得したメンバーは持続的に動き続けるが、そこに至るまでには時間が掛かり、それではスタートダッシュできないこともある。納得させる努力を怠ってはいけないが、さりとて、スタートダッシュさせるために、業績目標に組み込む、厳しく進捗管理する等の方法で圧力を掛けた場合には息切れしてしまう。納得性(アメ)と強制力(ムチ)を組み合わせてメンバーを動かすことが求められる。

また、メンバーに与えられた目標が当人の実力に比して低いと、上司としての支援の度合いに関係無く実行度が低いことが調査から判明している。従って、ストレッチ(背伸び)した目標と支援で加速させることも求められる。

さて、このように上司としてアメとムチを使い、ストレッチした目標と支援で動かそうとしても、メンバーが動けないことがある。それは動こうとする気持ちと裏腹に、動きを妨げる足かせがある場合である。

メンバーが認識している足かせは「協力不可欠な他部門・他者との調整の欠如」である一方、マネージャーは「マネージャー(自分自身)が上位戦略に懐疑的」「上の戦略がおかしい。だから自信を持って下に伝えられなかった」と認識している。
マネージャーとしてメンバーの足かせを外すためには、横の組織から協力を取り付け、上司を説得して望ましい判断を引き出すなど四方八方に影響力を発揮することが求められる。

ここまでが2011年から2013年の調査で判明したこととして第一部で紹介された内容である。
詳細は上述のバックナンバーをお読みいただきたい。

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■2014年のテーマ:周囲を動かすミドルの影響力
さて、では四方八方に影響力を発揮するにはどうすればよいか?部下を動かすためには、横の組織に協力してもらうためには、上司に提言を受け入れてもらうのは、それぞれどうすればよいだろう?
これが2014年の人材開発白書のテーマである。
読者諸氏には、一旦立ち止まり、自分ならそれぞれどうするか、日頃どうしているかを少し考えてからこの先を読み進んで頂きたい。

本調査では、主任(下)・課長(横)・部長(上)各515人に、周りの課長から依頼や提言を受け入れた場面を思い出して、依頼のしかた、その課長の日頃の言動、提言依頼内容の特徴(難易度、回答者の利害との対立など)をアンケート調査し、依頼を受けた側の行動につながる影響力の源泉(論理的な説明、熱意、業務上の権限、社内での発言力など)と依頼された側の認知(内容の正当性、依頼者への信頼感など)、依頼を受けた側の意向(肯定=喜んで受け入れよう/中立=まずやってみよう//否定=仕方ないから受け入れるか)の関係を有意水準5%で分析すると、周囲を動かす方法は多種多様であり、基本的には相手のタイプ、自分の持ち味を考慮して決めるべきという、ごく当たり前の結論が出たとのことだった。

そこで、有意水準0.1%で分析し、行動に達したもののみを、アプローチ別(肯定/中立/否定)に分解したところ、下・上・横それぞれの行動を引き出す盤石なルート(坂本氏曰く「鉄板ルート」)が抽出できたという。そのルートをもとに、ミドルが取るべき行動について4つの提言がなされた。

提言1
部下を動かすために、日頃から周囲に対して献身的な行動をとり、また部下に対する強い関心を持つ

提言2
横の組織に協力してもらうために、問題意識を共にする仲間を増やし、また利害関係を超える知恵を出す

提言3
上司に提言を受け入れてもらうため、会社目線で意見交換を繰り返す

提言4
マネージャーとして飛躍するために意図的に外向けのマネジメントを経験する


いかがだろう?
おそらく、この提言だけを読まれると、どこか当たり前のようなこと、あるいは日頃やっていそうなことに見受けられるかもしれない。
確かにこれらのこと自体は、それほど目新しいことではない。だが、読者諸氏はこれら以外のことを日頃から行っているのではないだろうか?
そして、それらはどのくらい成功しているだろうか?

この研究のすごさは地道な分析の結果、提言されたもの以外の手段の成功率が極めて低いことを導出したことにある。
その意味で「鉄板ルート」なのである。

その理由や詳細については、2014年版要約を是非ご一読いただきたい。
http://www.fxli.co.jp/co_creation/human_list/backnumber/2014.html

ミドルの戦略実行力についての研究は2014年版をもってひとまず終了とのことだが、来年以降の構想は既に坂本氏の頭の中にあり、上記の提言3の通りミドルである坂本氏自ら上司と会社目線で意見交換を繰り返した結果、その構想は承認されそうだという。来年度以降の「人材開発白書」にも大いに期待したい。

以上

開催日 2014年5月24日 (土) 14:00~17:00
学習テーマ

四方八方を動かしながらものごとを進めて行くために、ミドルは、誰に対して、どのような影響力を発揮すべきか!!

成果をあげるためにミドルは何をすべきなのか。人を通じて成果をあげることがミドルの仕事です。ミドルが孤軍奮闘しても効果は望めません。しかも、働きかける相手は部下だけではありません。上司や他部門など、周囲のあらゆる人を巻き込まなければなりません。しかし、単に理路整然と説明するだけでは、相手は受け入れてはくれません。熱意だけでも相手は動かせません。周囲を動かすために、ミドルはどのような影響力を行使すべきなのか。1,500サンプルの定量調査結果から考えます。

講 師 (株)富士ゼロックス総合教育研究所 研究室長 坂本雅明氏
会 場

明治大学 駿河台校舎 紫紺館 S7会議室
千代田区神田小川町3-22-14
https://www.meiji.ac.jp/koyuka/shikonkan/copy_of_shikon.html

定 員 30名 ※最低催行人数:5名 開催1週間前までにお申込人数が、最低催行数に満たない場合は、中止とさせていただきます。 予めご了承ください。
参加費 会員:¥2,000-(税込)   非会員:¥8,000-(税込)
開催概要

これまで4年間に渡り、「戦略実行力」をテーマに調査研究を進めてきました。本テーマの研究発表は、今回が最後になります。
そのため、本題(人材開発白書2014)に入る前に、3年間(人材開発白書2011-2013)の調査結果の振り返りをいたします。

第1部 戦略を実現に導くミドルのマネジメント
1-1 なぜ戦略実行マネジメントか
1-2 自己診断
1-3 戦略実行マネジメントのポイント
1-3-1. 戦略のマネジメント
1-3-2. 人・組織のマネジメント

※簡単な自己診断を実施したのちに、解説をいたします。また途中で何回かのディスカッションを行います。

第2部 周囲を動かすミドルの影響力
2-1 調査概要
 2-2 調査結果
2-2-1 部下を動かすために
2-2-2横の組織を動かすために
2-2-3上司を動かすために
2-3 まとめ ― ミドルの課題

※途中で何回かのディスカッションを行います。
※結論中心の説明になってしまいがちですが、HRDM研究会ですので、出来る限り調査プロセスの説明を行うように心がけます。

■参考資料
過去の人材開発白書が、富士ゼロックス総合教育研究所のホームページから全文無料ダウンロードできるようになりました。ご興味がありましたらご覧ください。
参加に際しての必須条件ではありません。
http://www.fxli.co.jp/co_creation/human_list/

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