2012年6月23日 (土)開催 | 基盤教育研究分科会

人材開発白書2012 「戦略実行力-トップの問題認識とミドルへの期待」

「人材開発白書2012」参加報告   (レポート:熊本大学 北村士朗)

今回の研究会では昨年に続き、「人材開発白書2012:戦略実行力-トップの問題認識とミドルへの期待」に関して、調査にあたった、株式会社富士ゼロックス総合教育研究所(http://www.fxli.co.jp/)研究室長 坂本雅明氏研究室長からの報告が行われた。

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◆なぜ業績が伸びないのか?

「なぜ業績が伸びないのか?」という企業にとっての永遠の問いに対し、本調査では「業績=戦略(年度の方針や施策)×実行」とした上で、業績が伸びない原因のうち戦略自体の是非はあえて問わず、戦略実行力、特に課長のそれについて調査と提言を試みている。
戦略自体の是非を問わなかった理由として、坂本氏は分析ツールや戦略定石の普及等により、同業界であれば戦略そのものについての差別化が難しくなっていること、にもかかわらず各業界内で業績に差が付いている(例えばUniqlo、Apple、IBM)のは戦略自体ではなく戦略実行力にあるケースが多いことを挙げている。

なお、本研究での「戦略実行力」は「年度の初めに決めたことを、どうすればやりきれるのか」といった、どの企業のどの課長もが求められるであろうことを指しており、決して、壮大な戦略や奇策の遂行を指しているわけではない。その意味で、本調査は高業績企業の調査や分析によく見られるような、読み手が「それは好事例の紹介であって、ウチには当てはまらないよ」と感じるたぐいではない。

坂本氏自身も「調べ・分析すれば分析するほど、結果が普通になってしまう」と苦笑されていたが、まさに多くの企業・組織において「できていて当たり前のこと」だが「できていない」であろうことが紡ぎ出されている。

その「当たり前のこと」は37人(32社)の事業部長クラス・営業本部長クラスへのインタビュー調査、および84人(27社)のミドルマネジャーへの質問紙による調査の結果である。一見するとインタビュー数が少ないように見えるが、事業部長・営業本部長という社内でもアポを取るのが大変な人たちへこれだけの数のインタビューを約1年間という短期間に、しかもフォローアップのために複数回行った点で、この調査の結果は極めて貴重なものだと考えられる。

インタビューの結果、事業部長クラス・営業本部長クラスが、戦略が現場メンバーに伝わっているにも関わらず行動が起こされないことに悩むとともに、その要因は組織構造や制度よりも、ミドルマネジャーのマネジメントにあると考えている姿が浮き彫りにされた。一方のミドルマネジャーもさまざまな阻害要因に悩まされ、思うように戦略実行できていないことも明らかになった。

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◆戦略実行はなぜ出遅れる?なぜ続かない?

研究会では、イントロダクションの後、「戦略実行マネジメント診断ツール」を参加者が体験した後、調査方法・データ・分析結果の報告が行われた。

坂本氏は戦略が実行されない場合、2つのパターンが考えられるとしている。ひとつは期首のスタートダッシュが効かず後手に回り、そのまま戦略が実行されないままに年度が終わってしまうパターン。もう一つは期首には実行されたものの、徐々にパワーダウンして期中になると実行されていない状態に陥る場合である。

その原因を探るために開発されたのが課長クラスのマネージャーの戦略実行力について簡易に診断できる「戦略実行マネジメント診断ツール」である。戦略実行力の高いマネージャーのコンピテンシーリストを思わせる設問群に対してどのくらい遂行できているかを答え、集計(暗算できる程度のもの)し診断へ進む。

そして、診断結果は横軸「戦略のマネジメント」縦軸「人・組織のマネジメント」にプロットされる。

前者(横軸)は、強制力も含めた統率機能であり、方向性と秩序を与え「やるべきことに集中させる」ことで、期首のスタートアップにつながる。

後者(縦軸)は部下との間の人間関係作り等の機能であり、戦略を納得させ活力を与え「もうひとがんばりさせる」ことで、期中以降の戦略実行の持続力につながる。

この両者の現状をツールで診断し、高次のバランスを目指し行動を変えていくことの重要性が説明された。

◆では課長はどうすればよい?

本研究会のまとめとし、戦略実行に向けたミドルマネージャー(主に課長)の課題について、戦略実行マネジメントのPDSサイクルの中で以下の5つが挙げた。

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【Plan】
1.部門戦略の策定:止めること・やらないことの決断
人員などが限られている中、重点課題にリソースを注力する必要があるため、課長はやらないこと・やめることを決断しなければならない。

2.部門戦略の展開:相手は文脈を異にするという前提に
部下に対して「同じ組織だから同じだろう」。関係他部門に「同じ社内だから一緒だろう」と考えてはいけない。考え方も背景も場合によっては言語も違うことを理解し、同じ会社の社員だから一緒、というスタンスではなく、「全く違う」といったようにマインドセットを変えなければならない。

【Do】
3.人・組織を動かすために:権限によらない影響力を発揮
優秀な課長の人、特に部下に対する影響力の源泉には他者を尊重する立場で包み込む、高い業務能力をもって敬意を払われる、といったような違いはあるが、職位=ポジションパワーに依存している人はいない。

4.失敗しないために:自分でやってしまわない、考えを押しつけない
部下を育てるためにも、何でも自分でやってしまわない、自分の考えを押しつけないといったことを心がける必要がある。
また、自分の過去の成功体験に頼りすぎてはいけない。

【See】
5.戦略の軌道修正:期初時点での論理的な検討
環境変化が早く・激しい中で、臨機応変な戦略変更が必要である。そのためには期首時点での、戦略に対して前提は何か?なぜその選択をしたのか?といった論理的な検討や理解が必要。期が始まってから「そもそもこの戦略は・・・・」と考えはじめても後手に回るだけ。

業績をあげるためには

以下は報告者の所感である。
前述の通り、今回報告され・提言された事柄は、坂本氏も認めている通り「当たり前のこと」の集まりである。多くの企業では課長がそれらの当たり前のことを当たり前に遂行できていないこと、そして当たり前に遂行するためには何がポイントかが今回の調査で明らかになった。

「うちの会社は戦略が無いから」「戦略がしっかりしていないから課長もメンバーもうまく動けない」と戦略の質を嘆く前に、そして戦略が実行できないのを戦略そのもののせいにする前に、戦略を実行できるようになっているかをチェックしみてはどうだろう?

そのチェックを迅速に行い、戦略を実行する中で、戦略の軌道修正の要否を、現場感覚をもって検討していく方が、戦略の是非を問いながら何もしないよりも、業績につながる可能性ははるかに高いであろう。そのことが今回の調査結果が語りかけていると強く感じた。

開催日 2012年6月23日 (土) 14:00~17:00
学習テーマ

人材開発白書2012 「戦略実行力- トップの問題認識とミドルへの期待」

学習目標

以下の4項目について、調査結果にもとづく情報提供を行い、ディスカッションによって深めていく。
1. 事業トップが感じている戦略実行上の問題
2. 課長に対する事業トップの期待
3. 課長が感じている部門戦略実行上の障害
4. 課長が事業実行の要として機能するための優先課題

講 師 株式会社富士ゼロックス総合教育研究所 研究室長 坂本雅明氏
会 場

明治大学 駿河台校舎 紫紺館 S2会議室
千代田区神田小川町3-22-14
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

定 員 20名 ※最低催行人数:5名。  開催1週間前までにお申込人数が、最低催行数に満たない場合は、中止とさせていただきます。予めご了承ください。
参加費 会員:¥2,000-(税込)   非会員:¥8,000-(税込)
開催概要

昨年3月の未曾有の大震災に加え、欧州金融危機による世界経済の不透明感。
このような厳しい環境の中でも、多くの企業は飛躍に向けて、新たな成長戦略に着手しています。
戦略は策定するだけでなく、現場のメンバーが実行してはじめてその果実を手にすることができます。
ところが、トップが発信した戦略はミドル層で減退し、保留され、あるいは歪曲され、現場のメンバーの行動は何も変わらないという状況が多くの組織で見られます。

どうすれば戦略を実行できるのか。富士ゼロックス総合教育研究所では、トップと現場をつなぐミドルマネジャーに焦点を当てて調査研究を進めています。

前回(2011)の現場メンバー2,017人(27社、49BU)に対する定量調査に加え、今回の『人材開発白書2012』では、37人(32社)の事業部長クラス・営業本部長クラスへのインタビュー調査、および84人(27社)のミドルマネジャーへの質問紙による調査を行い、ミドルマネジャーの戦略実行における課題をより具体的に分析しました。

ミドルマネジャーが戦略実行の要として機能するためには、どうあるべきでなのでしょうか?
調査・分析結果をもとに、参加者全員で一緒に考えていきたいと思います。

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