2011年1月15日 (土)開催 | 基盤教育研究分科会

医療教育におけるインストラクショナルデザイン活用事例

 医療者育成の考え方と方法

インストラクショナル・デザインと発達支援
 

(レポート:ブレス 代表 味岡 律子)

 2011年、最初のトピックわ談会の話題提供者は、日本医療教授システム学会 独協医科大学越谷病院救命救急センター長でNPO救急医療の質向上協議会の理事でもいらっしゃる 池上敬一先生です。先生は救急医療のドクターでもあり、医療現場やそこに携わる方々の育成について臨場感溢れるお話を伺うことができました。

受講された方々は、おなじみの企業の人事・人材に携わる皆さんに、看護師・医師・看護学校の先生など医療関係の方が加わり、23名が参加されました。 

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 医療現場では、頭で分っているだけでは、人命を救えません。
学習したことが実践の場(刻々と状態が変化し、秒単位の判断を要求され、とてつもない緊張感を強いられる状況)でキチンとした行動がとれなければ問題が解決されません。
「できるようにする」それが、救急医療教育に期待されるゴールとなります。

今回のわ談会は、「行動発揮に焦点を当てた取組」を池上先生よりご紹介いただきました。

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 わ談会では、学習を行動に結びつけるためのポイントとして、以下の3点をご紹介いただきました。


1)人が本来持っている学習スタイルに合った学習方法を取り入れる
2)映像を多用し、パターン認識力(弁別)の強化と代理強化(※)を促す
3)現場に存在する行動化を阻害する要因を取り去る

代理強化(vicarious reinforcement)とは、自分自身ではなく他人がある行為の結果として報酬を得たことを観察することを通して、自分もそうしよう、という思いを抱く(つまり、代理で強化される)ことを指す概念である。いわゆる「人の振り見て我が振り直せ」というもの。
出典:熊本大学 教授システム学専攻 基盤的教育論(公開科目)第3ブロック「学習心理学の3大潮流」より 

1) 人が本来持っている学習スタイルに合った学習方法を取り入れる
 学校で学んだ事を、今どれだけ記憶しており、今の自分自身の言動に影響を与えているのか学習経験の振り返りを、クラス全員で実施してみたところ「学びは学校にあるけれど授業じゃない」らしいという結論に到達。そもそも学びとして記憶に残らない学習手法(教師が一方的に話す方法)が、教育現場で採用され続けていることが、記憶にも残らないし、行動へとも結びつかない原因の一つではないかという問題提起がなされました。

 発達研究によると、人は生後10週から、学びを始めるらしいのです。乳児は、自分の手を動かし、動いている様子を見て自分の意思で動かすことを学習する。人は本来的に外界(内なる自分も含む)に作用してその反応から学ぶ生き物で、体験から学習するという方法が人のDNAに仕込まれた学習方法らしいとのことでした。
学校の授業のように一方的に教えることは、学びにならない。体験させ、仕事をさせることで学び、行動へとつながっていく。

 池上先生は体験を意識し、シミュレーションを用いた学習に重点を置いているとのことでした。しかし、シミュレーションと実際の場では、とても大きな乖離が存在します。では、どうやって、それを克服するのか。

2)映像を多用し、パターン認識力(弁別)の強化と代理強化を促す
 擬似とリアルの間に存在する乖離を埋める試みとして、用いている方法が映像です。
「心停止」という意味を理解していても、現場で心停止症状かどうかを判断できなければ、適切な対処ができない。心停止状態のいろいろな映像を見せ、その共通性やパターンを理解させる事を試みているとのことでした。
今回のわ談会では、サンプルとしてショックが少なく、見分けやすい映像を3本、全員で視聴しました。それぞれ、状況が異なり、同じ原因による症状だと素人目には判断がつかないものでした。しかし異なる映像を見せながら、共通症状を解説していただくと、同症状であることがよく理解できました。

 その後は、医療現場でのチームの動きを理解させるための映像をクラス全員で視聴。救命救急センターに搬送されてきた患者さんの受け入れ風景の映像...先生はTVドラマのように大騒ぎはしないんですと冗談をおっしゃりつつ...緊迫した中、チームリーダーが患者の様態を救命士より収集。受け入れスタッフ側は配置について、意識を確認する者、脈の強さや脈拍数を報告する者と各人がそれぞれの役割を淡々とこなしていく様子が数分間続く内容でした。その映像のポイントを先生が解説。リーダーは誰で、何をしているのか。どう振る舞えばよいのか。リーダーの行動、他スタッフの振る舞い、ギャラリーの振る舞いなどを、チーム医療行為におけるルールや役割を説明していただきました。行動としてやるべき事が無理なく理解できる。症状を見極めるための弁別力の強化やチーム行動として何をすべきか(代理強化)が映像によって、すんなりと理解することができる好事例をご紹介いただきました。                                                    

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3)現場に存在する行動化を阻害する要因を取り去る
 人は、いくら正しいと思っていても、多くの他者が賛成しない状況では、期待行動をとれるものではありません。正しい行動がとれるように環境を整えるのが管理職の仕事であり、行動化を促す重要事項であるとのことでした。

①整えるべき最低の条件
・上司はメンバーや部下が学んできたことに関心を持つ。無関心状態では、メンバーの行動は変わらない。
・研修の提供者が行動変容までその責任範囲とする。研修を提供する人と、実行を促す人が別々では行動につながらない。
・いつでもチームで練習できる場や雰囲気を組織文化として作る。

②行動を促す仕掛け作り
・上司に自分の能力とそれを用いてやりたい仕事の希望をレターで知らせる仕組み
例:○○を今回のセミナーで勉強してきました。だから、業務として××をやらせてください。
・学習者が孤立しない仕組み(新人看護師の離職率の高い病院で非公式に新人が集まれる場を作った)
・指導者が、飲み会でもなく研修会でもない第3の場を作る(シミュレーションの場も第3の場になる)。

今回、池上先生からIDを含め心理学など社会科学の知見を援用した人材育成の取り組みについてご紹介いただきました。行動変容への数々の取り組みは、業種を超えて、使えるアイデア満載の内容でした。

以上 

開催日 2011年1月15日 (土) 14:00~17:00
講 師 獨協医科大学越谷病院救急医療科教授
日本医療教授システム学会代表理事/池上 敬一 氏
会 場

明治大学 駿河台校舎 紫紺館 S3会議室

定 員 30名
※最低催行人数:5名
開催1週間前までにお申込人数が、最低催行数に満たない場合は、中止とさせていただきます。予めご了承ください。
参加費 会 員:¥2,000-/回(税込) 非会員:¥10,000-/回(税込)
開催概要

■概 要
医療教育は、従来の徒弟型「教師-生徒-知識」から社会科学援用型「学習者-ファシリテーター-コンテキスト」に急速に移行しています。
その背景には、医療の質向上に対する強い要求が存在します。先駆的な病院や大学では、学習デザインを用い「行動」「結果」を出していく新たな医療教育の取り組みが既に始まっています。
今回は、その取組み事例をご紹介します。
■学習内容
最新の医療者育成の考え方・デザイン・実践の具体例をご紹介し、IDモデル、学習心理学、認知心理学といった学習理論の知見を医療教育の中でどのように活用しているのかを一緒に考えてまいります。

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■支払方法:当日会場受付時に現金支払

■領収書発行:
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