2010年9月11日 (土)開催 | 基盤教育研究分科会

「熟達」の理論・仕組みを理解する(第3回)

内 容



こんにちは。株式会社IWNCの廣野です。
熟達シリーズも今回で3回目であり、これまでの基礎的な知識を現実の世界(仕事)に結び付けていく段階に入ります。テーマも『組織における熟達の限界と効用』で、組織における熟達のプロセスを理解した後、企業の事例をもとに熟達の実際を学びます。
私は今回初めての参加でしたが、最初に1・2回目の振り返りをしていただいたため、無理なく話題についていくことができて助かりました。これまで参加されていた方々にも、良いリマインドになったようです。

【組織における熟達とは?】

熟達していくには、4つの基本的な条件があります。それは、

① 領域固有のものであること
② 時間がかかること
③ 課題解決の積み重ねであること
④ 内発的動機が重要であること

熟達は「継続は力」の要素が大きいと思うので、特に④が重要であり、組織が外的な動機づけ(インセンティブ等)を行なうだけでは、熟達者を育てることは困 難でしょう。また、熟達者の育成は、その必要性に意義を挟む人は少ないとしても、教育研修やOJT以上に投資対効果(ROI)の証明が難しいとも感じまし た。


また、サービス・プロフェッショナルの熟達者になるための道のりは、

① プロになるには最低でも10年はかかる
② 人と人をつなぐ技術を磨く
③ 正解のない世界だからこそ学びあう
④ 現場を離れ、内省する時間を持つ
⑤ その仕事ならではの経験にも注目をする

中でもなるほどと思ったのは、サービス・プロフェッショナルにおける熟達は一人で完結するものではなく、必ず周囲(環境)との対話的相互作用の中で育まれ るということです。一人で完結できる熟達は、この場で扱う『適応的熟達(知識・経験が概念化され、新しい課題にも柔軟に対応できる)』ではなく、『手際の 良い熟達(特定の手続きに際立って習熟している)』であり、組織全体の活性には応用が限られるのでしょう。ANAの事例でも「人のしていることをよく見、 皆で協力していこう」という件があり、組織の風土・価値観といった人的環境が熟達に与える影響の大きさが窺えました。

堤さんの経歴を題材にして、個人と環境の相互作用を考えるセッションでは、1時間以上にわたり(!)堤さん個人の興味深いエピソードが語られました。本題 は別にしても、「一生懸命やっていれば、必ず誰かが見てくれていて、助けてくれる」という言葉が印象的でした。現実には、たった一人でも自らの道を突き進 めるような強靭な精神力の人は稀で、ここでも相互作用(コミュニケーション)の大切さが見えたような気がしました。


他にも、

◆ 日本の組織は熟達者を生み出すようになっていない(プロフェッショナルの定義が曖昧)。
◆ プロフェッショナルと専門職は違う。(オタクは利他的ではないためプロフェッショナルにあらず)
◆ ベテランほど問題定義に時間をかける(真因を探る)。
◆ 「創造性」や「技能伝承」といったテーマに対しては、熟達は向いていない。

といったトピックも挙がりました。なるほど、ですね。


【個人ワーク・ディスカッション】

自分の経験を5つの段階(仮決め→見習い→本決め→開花→無心)に分解し、熟達の視点で振り返る個人ワークを行ない、それをグループでシェアしました。
お恥ずかしながら、私個人は30代半ばに差し掛かっても「本決め」の一歩手前といったレベルですが、他の諸先輩方からは興味深いエピソードと、各場面での 意思決定に影響した人・機会などが聞けました。一見バラバラに見えるキャリアでも、その根底にはその人なりの軸があり、「なるほど理にかなっているもの だ」と感心しました。熟達も、同じ領域を極めるにしても、その人なりの色が出るから面白いのでしょう。

 次回は(第4回)は10月16日(土)、いよいよ最終回です。
参加者の柳さん・内橋さんから、熟達に関する持論を発表していただきます。


レポート報告:HRDM会員 廣野勝利




開催日 2010年9月11日 (土) 14:00~18:00
学習テーマ

組織における熟達の限界と効用 -熟達の世界を広げてみる

講 師 株式会社リクルート ワークス研究所 主任研究員/笠井恵美氏
会 場

明治大学 駿河台校舎/紫紺館3階 S4会議室