2010年9月 4日 (土)開催 | 基盤教育研究分科会

成人学習理論 夏季集中セミナー(第2回)

内 容



昨年のシリーズ分化会「経験学習を活用したプログラムの開発」でご指導いただいた堀本麻由子さんによる、2回にわたる夏季集中講座の第2回目でした。


今回は初参加者が1名。堤さんによる軽妙なトークでHRDMの概要や活動が紹介された後、堀本さん登場です。


「意識を変えるために、研修やプログラム等、どんなものをやっていますか?」という問いで始まった第2回。参加者はそれなりの経験者が多いため、この日の 話し合いは比較的内容の濃いものであったと思いました。問いに対して各グループ(5~6人1グループ)で話し合い、様々な意見が上がりました。


インプロビゼーション、承認・ほめる・しかる、本、人事異動、修羅場、特命業務、再就職支援プログラム、リーダーシップ研修、アントレプレナー研修、幹部講話、などなど。


ホワイトボードにこれらを書いている堀本さんが、研修や幹部講話についてひと言
「すべて意識が変わることを意識してるの?」
との問いを書き加えていました。これについては具体的な言及はありませんでしたが、その場の目的や在り方について考えさせられるひと言です。


私はこの時、この「意識の変化」というのは「行動の変化」と同じか、違うのか、という疑問がわきました。実はこの点についてはグループの話し合いの折りに堀本さんから「意識と行動」に関する軽い問いかけがあったので、少し引っかかっていたのです。
意識は目に見えない。でも意識が変わるから行動に変化が起きる。
このプロセスに関する議論は深くはしませんでしたが、この話し合いの中では「行動の変化を意識の変化として認識する」という前提で進めました。ただし、意識の変化をしたから必ずしも行動の変化があるわけではないよね、というのはグループのメンバー共通の認識でした。
みなさんはどうお考えでしょうか。


さらにその後
Q1.「意識の変化を妨げている要因は?」
Q2.「意識が変わる/変わったと思える要因は?」
という問いについてグループで話し合いました。


Q1に対する回答例として、
人のせい/様々な恐怖/評価基準/想像(妄想・幻想、できないという思い込み等)/やりたくない/変わりたくない/トラウマ/場のムード/目標がない/問題意識がない/成功体験がない
などが上がりました。


Q2に対する回答例として、
自分事として捉える/メリットがある/自分の価値基準/事実/やりたい気持ち(夢・希望・目標)/こういう人になりたいというモデル/気づき/異なる意見/新しい環境/関係/楽しい
などが上がりました。


これらはクラントンのいう「意識変容の学習プロセス」の前提の問い直しにあたる部分です。学びを仕掛ける側の人が、こういう項目を知っておくことで、ふりかえりを効果的に進めることが出来そうです。また、学ぶ側にとっても、振り返るためのトリガーになります。


この後、職場学習におけるアクションラーニング会話の可能性について触れ、アクションラーニング会話のメリットを確認しました。この中で「リフレクション(振り返り)
は、自然でない行動であることが堀本さんより強調されました。ましてや自分の「前提」だからこそ、それを見つめ直し、覆すような思考を求められるので、定型的な進め方でアクションラーニング会話をすすめる意味があるんだと認識しました。


後半は実際にアクションラーニング会話を体験しました。会話に関するポイントは前回のレポートを参照してください。前回経験していることと、皆それなりに対話や聴くことのレベルの高さもあり、プロセスは順調に進みました。さすがです。


マーシック曰く「会社はしゃべる(話す)文化に満ち溢れている。しかし、アクションラーニング会話では、敢えてそれをせず、聴く・書く・考えることに徹す る」というポイントを堀本さんから頂きました。今回もポストイットに自分の意見を書き留め、相手の言うことを自分のメモに書き留めるというプロセスを経る ことによって、会話の記録や気づきの記録が実現されます。


今回私は、アクションラーニング会話が課題提供者に対する周りの仲間の参加意識によって場が形成されるという感覚を持ちました。安心・安全な場であり、自 分のうちをさらけ出すことができる仲間なのかどうか。また、周りも課題解決者の意識変容を心から支援する気持ちで、自分事として取り組んで考えられるかと いう本気度。これが高ければその場は良くなるでしょう。反対に、批判的であったり、意図してある方向に動かしていこうとする人がいるとその場には混乱や迷 いが生じるのではないかと危惧します。幸い、私たちのグループでは良い方向にそれぞれが作用し、問題提起者が自ら前提を見直し、本質的な問題を掘り起こす ことが出来ました。


堀本さんからは、アクション○○系の手法は一般化できないことがデメリットだけど、人と組織のコンテキストに合わせて柔軟に対応させられるメリットを持 つ、という長所短所のお話を頂きました。そして、効果を求めるのではなく、前提を振り返りながらそれを見直し、適切な行動をすることができるようにするた めの学習機会なのだという話も頂きました。


アクションラーニング会話をしたから何かしら実利を得られたり、測定できる効果がすぐに現れるものではないのだそうです。また、「意識を変える学習」なの ではなく、「意識が変わる思考方法の学習」であることを最後に念を押されました。つまり、前提を疑い振り返り、見直し、前提を再設定した上で次のステップ に進んでいく。残念ながらこういったプロセスを自分一人で行っていくのは難しいようです。ですから、アクションラーニング会話のような一連のステップをう まく使いながら訓練する必要があります。意識が変わる思考プロセスを一人ひとりが修得していく必要がありそうです。


アクションラーニング会話を採用する側の人がそれらを理解し、研修その他のプログラムの中でうまく活用していくことで、業務の現場や普段の生活の中で自律的に学習する力を養っていく必要性が高いことを実感しつつ、第2回を終えました。
堀本さんもまだ研究の最中にあるとのこと。また来年、この場で進化した内容のお話が聞けることを楽しみにしています。

HRDM理事 中川 繁勝




開催日 2010年9月 4日 (土) 14:00~17:50
学習テーマ

「意識変容学習過程とは何か②

講 師 東海大学チャレンジセンター講師/堀本麻由子氏
会 場

明治大学駿河台校舎 紫紺館 3階 S4会議室