2010年8月21日 (土)開催 | 基盤教育研究分科会

成人学習理論 夏季集中セミナー(第1回)

内 容




昨年のシリーズ分化会「経験学習を活用したプログラムの開発」でご指導いただいた堀本さんに今年は、2回にわたる夏季集中講座として、「意識変容学習過 程」について、「アクションリフレクションラーニング」を中心にセミナーを実施いただきます。今回は、その第1回目でした。


まず、「意識変容学習」について成人学習論の視点から次のような説明がありました。
「意識変容学習」とは、考え方、行動の前提(Assumption)をふり返る学習である。
「経験」は周りを理解する方法、前提、信念、知識を形作っている。成人は、多くの固定した思考の習慣やパターンを有しておりオープンでない。従って、ふり 返り(Reflection)のプロセスがないと、硬直的な前提、価値観は吟味されない。意識変容の学習は、「混乱を起こすようなジレンマ」が問い直しの きっかけとなることがある。


次に、その分野の権威であるコロンビア大学大学院のティーチャーズカレッジ組織学習学部のマーシック教授の紹介と、「アクションテクノロジー」についての 類型の説明がありました。その中でも「アクションラーニング」については、個人的には昔から、「実際の問題に対し集団で議論し対応行動を見出す手法」が広 義の定義と思い込んでいたため、最近よく聞かれる「アクションラーニング」との違いや正確な定義がわかっておりませんでした。今回、その要素や定義を明確 にしていただいたので頭が整理できました。
「要素」としては、

①参加者としての実際の問題・課題を題材とする。
②解決策を考えるとともに、責任を持って行動する、
③話し合いや行動からの省察によって学ぶ、

の3つが含まれるとのことで、堀本さんの「定義」は『小グループで問い(質問)を投げかけながら、グループで問題を捉えなおし、行動から学ぶ手法』とのこ とです。また、GEのやっているような学習を意識しないもの(ワークアウトのこと?)も「暗黙派」として含まれるということです。
集団での問題解決に当たっては、①②は当然含まれるので、③の部分が肝であるということかと思います。


今回、問いの投げかけ方の方法論として、「アクションリフレクションラーニング」(「アクションラーニング会話」)というものが紹介され、実際のワークを行いました(1チーム6~7人×3チーム)。
この手法は、次のステップを踏みます。


1. 課題設定者の「問い(課題)」に対し、他のメンバーが「客観的」な問いかけを行うことにより、課題を共有する。
2. 他のメンバーは、「省察的」な問いや「解釈」のための問いを紙に1つから2つ書きとめ、一人ひとり順番に質問する。課題設定者は、問いを全て聞いて、最後に「感想」を述べる。
3. 他のメンバーは、課題の前提についての自己認識を「自分だったら・・・」として紙に1から2つ書きとめ、順番に述べる。課題設定者は、全員から聞いて、最後に「感想」を述べる。
4. 他のメンバーは課題設定者の問いを再定義する。紙に書きとめ、順番に述べる。
課題設定者は、全員から聞いて最後に「感想」を述べる。話し合いのプロセスに関するコメントを各メンバーが述べる。最初の問いがどう変容したか述べる。
5. 課題設定者が、自分の課題に関するこれからの行動について述べる。


ワークの感想として、まず、「前提に気がつくことが出き、問題が明確化された。本質的な話になりやすい。」というものがありました。これは主流のアクショ ンラーニング手法と同じ効果と思います。「アクションラーニング会話」としての特徴として良かった点は、「問い」を書きとめ、メンバーが一人ひとり順番に 「問い」を述べるという手法に基づくもので、

① 決められた順番で話していけるので、議論のコントロールを気にすることなく話がしやすい、
② 議論が特定のテーマに偏らず、いろいろな視点での意見が出てくる、
③ 話す前に考え、また問いを1~2個に絞り込むので、整理ができ、質の高い問いが作れる、
④ 問いの形なので押し付けがましくなく、それでいて課題設定者はアドバイスをもらっている気になれる、

などが出されました。
一方、良くなかった点としては、

① 課題設定者が、問いに答えたいときに答えられないのでストレスが溜まる、
② 他のメンバーも言いたいときに意見が言えない、待つ時間が長いなどのストレスが溜まる、
③ 問いを出しても、最後にフィードバックをもらえないのが寂しい、 というものが上がりました。


しかしながら、この良くない点に関しては、

① 逆にその「ストレス」が、思考を深めるために重要なのではないか。最初に話に出た「混乱を起こすようなジレンマ」を意図的に作り出しているのではないか、
② 一方で、お互いを尊重するという安全な場も確保されている、
③ このため、アサンプションから、より深い階層のビリーフへの問いになっていくのではないか、

非常によく意図されたプログラムである、
という大変示唆に富んだコメントが寄せられ、なるほどと思いました。

その他、感想として寄せられたのは、

① 最後の部分(行動計画)がさらっとしている。「個人学習」に向いているのではないか、
② 自分の会社でやるとどうなるんだろうか、 というような実際の適用場面に関するものでした。
 
個人的には、ワークの間、非常に集中した時間を過ごすことが出来ましたので充実感のある一日でした。


HRDM会員 青山 誠明




開催日 2010年8月21日 (土) 14:00~17:50
学習テーマ

意識変容学習過程とは何か ~アクションリフレクションラーニング(ARL)を通して考える~

会 場

明治大学駿河台校舎 紫紺館 3階 S4会議室

定 員 東海大学チャレンジセンター講師/堀本麻由子氏