2009年12月19日 (土)開催 | 基盤教育研究分科会

「ワークハピネスカンパニー」人材が育つ組織の条件 -強さと優しさを併せ持つ組織づくり-

テーマ 「ワークハピネスカンパニー」人材が育つ組織の条件
-強さと優しさを併せ持つ組織づくり-
開催日時 2009年12月19日(土)/14:00~17:00
会 場 エスプール総合研究所 研修室
参加者 15名
講 師 株式会社エスプール総合研究所 代表取締役社長/吉村慎吾氏
ナビゲーター 堤 宇一 人材育成マネジメント研究会




■実施報告(HRDM:中川繁勝)

2009年最後のHRDMはいつものように代表の堤の話から始まりました。
毎回、冒頭にHRDMの活動ビジョン等についてお伝えしています。
「人材育成に関する専門性の高い人材が、理論やデータに裏付けられた技術や知識を駆使し、実行している」
そんな世界を目指して活動してきました。


今回のトピックわ談会は、あるホテルの業績を1年でV字回復させ、「ワークハピネス」という考え方を創り出した、エスプール総合研究所の吉村氏をお招きしました。事例に基づいた強い組織の作り方、結果を生み出す会社の作り方を学ぶ3時間でした。

吉村氏は公認会計士の経歴をお持ちです。会計系のコンサルティング企業や企業の上場審査などの仕事を通じて多くの企業を見てこられたそうです。


●強い組織とは?

そんな中で、「強い組織」とはどんな組織なのかを見いだしてこられました。彼の言う「強い組織」とは、高い業績を上げ続ける組織のことを言います。

強い組織に必要なことは何か。

1つは、「スピード」です。
作り上げたビジネスモデルや業務システムを、時代や環境に合わせてスピーディに変えていけるかどうか。必要ならば方向転換も厭わずに、進めていく。そしてその意思決定にも速さが求められます。

もうひとつは「ビジョンの共有」だと彼は言います。
しかし、ただ表面的なビジョンの共有に留まらず、彼の主張はそのビジョンの根底にしっかりと横たわっているはずの「価値観」を共有することが重要だと説い ています。それが組織のアイデンティティとなり、意思決定の判断基準にもなるわけです。Google等の事例を引き合いに出しながら、価値観の共有こそが 意思決定を速め、相互尊敬や愛と絆を生み出し、ひいては組織の一体感を生み、強い組織の源ができると言っています。

これは彼が公認会計士として多くの企業を見てきた中で得た結論の一つです。


●人が育つ組織とは?

ビジョンを共有しつつ、次にそのビジョンを実現すべく動いてくれるメンバーが必要になります。では、そんな高い業績を生み出すような人材をどう作り上げていったらいいのでしょうか?

それは、「使命感」と「熱中」。

使命感をもって熱中して仕事に取り組む人がいたら、まさにそれがワークハピネスな人と言えるようです。

「好き」「得意」「貢献できる」の3つが、人が使命感を持つために必要な項目だそうです。そして、そんな仕事をもって熱中して取り組んでいる時、人は最大のパフォーマンスを発揮するのだと氏は訴えます。

まさに今回のテーマの核となる「人が育つ組織の条件」は、使命感を持った仕事に熱中して取り組めているか、という点に尽きます。

吉村氏は多くの事例を含めながら、このあたりのお話を納得感の高い内容で進めてくれました。

熱中することは誰にでもあると思いますが、こと仕事に関してはどういう意識で「熱中」という領域にまで行けるのかがよくわかっていませんでした。私たちはどうやら「使命感のない熱中」をしてしまうと、ストレスを感じたり、消耗してしまうようです。
ところが使命感をもって熱中すると、決して消耗することはなく、むしろ寝食を忘れて取り組んでいる方々がいるようです。

使命感は頼りにされることで生まれ、それがまた人を強くするのだそうです。
さらに、周囲が熱中していれば自分も自然に熱中し、その熱中は持続します。環境作りが確実に人のパフォーマンスに影響を及ぼしているわけです。


●使命感と熱中を生み出す価値観

「使命感」と「熱中」が溢れている会社が「ワークハピネスカンパニー」。

そのような組織では、目的追求の「厳しさ」はもちろんのこと、お互いを尊重し一人ひとりの無限の可能性を信じる「優しさ」を兼ね備えたチームであると彼は定義しています。

実はこの硬軟織り交ぜたような表現は、発展していく企業に共通する部分でもあります。
「ビジョナリーカンパニー2」という本の中では「第5水準の経営者」と呼んでいますが、その経営者の資質が、「目的に向けた不屈の精神と謙虚さ」なのです。

掲げた目標に対してはどんなことがあっても諦めない強い心。この力が推進力になります。
そして謙虚さ。ここでいう謙虚さとは、輝かしい成果に対して「自分の力で成し遂げた」と自慢するのではなく、むしろ「自分はたいしたことは出来なかったけれども、優秀なメンバーや仲間の力のお陰だ」と言えることです。

つまり、仕事に対しては厳しく、しかし一方では働く仲間たちに花を持たせる。
簡単に言うと「気は優しくて、力持ち」と私は解釈しました。

加えて、「自分がしてもらいたいことは、まず自分が相手にしてあげること」と吉村氏は続けます。

そんな人間性尊重の価値観や考え方の共有が、ワークハピネスを高め、良い仲間とチームを生み出していくようです。


●老舗ホテルを再建せよ!

前半のレクチャーを終えると、後半はケーススタディとなりました。
課題をもつ老舗ホテルの建て直しを考えるワークです。

吉村氏の体験を元にしたケースで、まず状況と条件が示され、グループ毎のディスカッションを通してアクションプランを考えていきます。

今回は時間も限られていましたので、各自でポストイットに自分の意見を書き出した後に、KJ法でまとめていくという作業をしました。

グループ毎に発表もしましたが、いずれのグループも大くくりで言うと似ていたようです。吉村氏曰く、「みなさん、アクションプランが人事系に寄りすぎてますね」と。


●人材育成の立ち位置を見直す

なるほど、確かにそうだったかも知れない。ここは反省すべき点であり、人材育成担当者が陥りやすい罠なのかも。
私たちはとかく人と組織に意識が向かいがちですが、まずは経営者視点でものを考えることが必要です。その上で人と組織に必要なアクションを人材育成の観点から考えることが基本。

人材育成は経営と手をつなぎ、経営目標を達成するための人材を育成することが、人材育成部門の使命なのですから。
私たちはそれを忘れてしまいがちで、目の前の受講者の評価や変化を気にしすぎているのかもしれません。
今回のワークで、私たちの考え方の偏りを発見できたことは、今後に向けて貴重な機会であり、吉村氏のコメントは私たちの視野の狭さに対する客観的かつ適切な指摘と言えると思います。


●組織を変えるためにまずやるべきこと

吉村氏の専門性は会計にあり、私たちの専門性は人材育成にありますが、彼はその専門性の見地から人や組織が活性化する原理原則に近づきました。

私たちはこの専門性にだけ留まっていてもいいのでしょうか。

組織にいると自分の役割や業務が明確になるので、そこに無意識に枠を設けて考えてしまいがちです。しかしながら、そのスタンスは現場にも伝わり私たちに距離を感じてしまうのではないかと感じます。私たちのもつ既成概念が組織の成長と発展を妨げているかも知れないのです。

吉村氏は、価値観の変革が実現する仕掛けについて、「一人ひとりが自己の限界を乗り越えた時」と表現しています。これを「成長を妨げている既成概念(古い価値観)を捨て去ったとき」とも言っています。

人や組織に対して変化を求める前に、まず私たち自身が古い価値観を捨てて、限界を超える仕事をしていく必要があることを強く感じました。
そうなった私たちを見た現場の人たちに「ここまでやってくれるの?」という驚きや感謝、感動が生まれた時に、私たちの存在価値が明らかになるのかもしれません。


吉村氏は「人は体験して(見て、触れて、行って)、体が感じて、変わる!」と言っていましたが、全く同感でした。

行動変容には、知識や理屈の理解に加えて「感じる」という機会を経ることが必要。
私たちは「感情」というしくみをもった人間なのですから。

そんな人の学びのしくみを改めて考えさせられたわ談会でした。


(報告:HRDM理事 中川繁勝)
開催日 2009年12月19日 (土)